久保田:会議のメンバーに選ばれた人の意識は、その業 務で一番できる人という自負を持っているので、担当 する仕事は万全。でもそこで止まってしまっている印 象でした。
大西: 私は 2010 年のリニューアルオープン当時から
スタッフとして働き、2012 年から社長を務めています が、別荘村からホテルへの転換時にも「経営」の指標を現場が共有することなく来てしまった印象があります。そもそもこう した部署をまたいだ会議すらしたことがなかったんです。それぞれに特化した仕事に専念し、他の業務に意見するのは「越権 行為」という雰囲気がありました。
久保田:ありがちな縦割りの弊害なんですけど、実は突き詰めると部署内での縦のマネジメントもできていなかったんです。 雇用されているから働いていますという意識だと、それ以上を求めよう、変えていこうという仕事にならない。自分の仕事は しっかりやっている気でも、僕がそれを数値で確認すると把握していない。全体が見えていないんです。そこに何かが「欠け ている」という印象を受けたのが、僕の不安の要因でした。
田中コーチは、そうした状況をどう変えていったのですか?
田中:週1回、決めたことが進んでいるか進捗会議をするのですが、状況を確認すると口頭ではオンタイム(計画通り)とい う返事でも、その根拠がない。何か提案を求めても、誰かが「それは無理」と阻んでしまう。やがて意見も出なくなってウー ンとなってしまう。この状況を壊さないといけない。
大西:田中コーチの「壊し方」は絶妙でした。どのようにすれば 利益が上がる? と聞かれて、「人が来ないから」「立地のせい」、 果ては「お客さんのせい」という堂々巡りに。そこへ田中コーチ が「何でもいいから手元の紙に提案を書いて」「発表して」ときっ かけを作る。言葉では言えなくても、書くことで他の部署への意 見も出せるようになる。田中コーチが、場に風穴を開けたり、違 う視点からスパイスを投じてくれたりすると、その度にピシッと しまる。それで徐々に変わっていきました。
田中:私はホテル業務のことは実はまったく分かりま せん。本社の営業部門なら物販という数値での目標管 理が可能ですが、ホテルという対人サービスはそれと は違います。何を目標にするかも現場のスタッフが決 める必要がありました。これは久保田コーチの受け売 りですが、コーチはプレイヤーじゃない。試合に出て 点を取るわけじゃない。点を取りに行くのはスタッフ 1人ひとりだと自覚してもらうことが大切です。これ を常に意識してもらうよう心がけました。