
「すごい会議」を導入して最初のセッションはいかがでしたか。
中崎様:率直に申し上げると、メンバー全員が相当苦労していました。これまで感覚で進めていた業務について、徹底的に言語化・数値化することが求められたためです。
太田さんから「このサービスのユニットエコノミクスは?」と問いを投げかけられても、半数以上のメンバーが即答できないんです。まさに、私たちがどれだけ感覚に頼って仕事をしていたのかを突きつけられた瞬間でした。これまで本能で動いていた領域を数字とロジックに落とし込む作業は、事業基盤をゼロから組み直すような大変さでしたね。
太田:初めてTANPAC様とお会いした際、中崎さんという強いリーダー、『筋肉食堂』というブランド、そして力のある幹部の皆さんを拝見して、直感的に「非常に大きなポテンシャルを秘めた組織だ」と感じました。一方で、トップとメンバーの間で、目標に対する視座に明確なギャップがあったのも事実です。視点やマインドが少し整うだけで、さらに大きな成果が生まれる余地があると考えていました。
そこでまずは現状を徹底的に可視化し、全員の目線を揃えるところから取り組みをスタートしました。完璧さを求めるのではなく、その時点でできるベストを積み重ねていくことを重視しながら、セッションを進めていきました。
苦しい状況を経て、どのような変化が生まれたのでしょうか。
中崎様:本当に劇的な変化でした。特に顕著だったのが、コミュニケーション量の増加です。それぞれが自身の目標を明確にするには、他部署の状況や細かな数値を正確に把握する必要があります。そのため「ここはどのように進めるのか」「この数字の背景はどうなっているのか」といった対話が自然と増えていきました。結果として、「30分だけ話したい」「今10分ほど相談させてほしい」といった、自発的なコミュニケーションが、導入前よりも5倍ほどに増加したように感じています。
なかでも印象的だったのは、これまで発言が多くなかったメンバーの変化です。彼らが示すコミットメントの質が格段に上がり、ミーティングでの発言量も一気に増えました。自ら悩み抜いて作ったKPIには、当事者意識としての”魂”が宿り、業務への姿勢にも大きな変化がもたらされました。単なる「やらされ仕事」ではなく、「自分ごと」として主体的に取り組む意識が自然と芽生えていったのです。
こうした自発的に問題解決へ向かうこのプロセスこそ、「すごい会議」が組織にもたらした大きな価値だと感じています。
太田:すごい会議では、KPIを初回から完璧なものを作る必要はありません。大事なのは、“自分で考え、自分で決める”プロセスです。TANPAC社はセッションを重ねるごとにKPIの解像度が上がり、アクションの質が明確に変わっていきました。
特に印象的だったのは、メンバーの皆さんが互いの目標や数値に対して建設的に疑問を持ち、議論できるようになったことですね。これは仕組みが定着しはじめた証拠であり、最も大きな成果のひとつだと感じています。
事業面での成果はどのようなものがありますか。
中崎様:導入からまだ日が浅いものの、既に様々な原価が下がり始めています。これまで感覚的に把握していたコストを一つひとつ可視化し、管理可能な状態に整えたことが大きな要因です。このまま取り組みを継続していけば、利益率は大きく向上するので、確かな手応えを感じています。
また、副次的な効果として「本来取り組むべきだったにもかかわらず、これまで見えづらかった課題」が次々と浮き上がっています。例えば、各部門で行われていた数値管理などは仕組み化して一元管理しなくてはいけないと分かっていながら、日々の業務を優先するあまり属人的に管理されていました。これまで見過ごしていた組織課題が明確になったのです。ただしこれらは組織が次の成長ステージに進むために必要な発見であり、非常に前向きな変化として受け止めています。