株式会社一番大切なこと
私のコーチとして使命は、『苦悩に値する働く意味』の創出です。
地球は平らだと信じていたがために出帆しなかった船は、どれくらいあるだろう?
信じているものが見えるものを限定し、見えるものは打ち手を限定し、打ち手は当然のことながら、望でいる結果が手に入るかどうかを決定付けます。あなたは何を信じてビジネスしてる?
業績好調の中にあえて高い目標を掲げ、さらなる組織の進化を目指して導入した「すごい会議」。過去の成功体験から脱却し、幹部の価値観や「仕事の優先順位」を変容させることで、次なる成長のステージへと踏み出そうとしている正栄産業株式会社。
この取り組みを通じて、単なる短期的な業績向上にとどまらず、中長期的な「人の成長」という本質的な変化の兆しが生まれつつある中、今回は森藤社長に、導入の背景からセッションを通じて見えてきた課題、そして今後の展望についてお話を伺いました。
インタビュアー:多角的な事業展開で業績も好調だとお聞きしていますが、まずは大野コーチとの出会いや「すごい会議」を知ったキッカケからお伺いできますか。
森藤社長:私は年間150冊ほど本を読むのですが、その中の1冊として「すごい会議」の書籍を読んだことが最初のキッカケです。
その後、東京での講演会で私が登壇した際、偶然にも次の登壇者が大野コーチでした。
登壇してお話をされていた大野コーチの内容が非常に面白く、本質を突いていると感じたことがご縁となり、「すごい会議」導入について詳しくお話を伺い、直感で大野コーチにお願いすることにしました。

インタビュアー:大野コーチのどのような点に、自社に変化をもたらす可能性やインスピレーションを感じられたのでしょうか。
森藤社長:表現の手法が非常に興味深かったですね。
人が変わり、成長していくためのアプローチには様々な形があります。経営トップである私から社員へメッセージを伝える際、どうしても私自身の伝え方の「癖」が出てしまうものです。
しかし、外部のプロフェッショナルが異なる視点や表現で伝えることで、本質的なメッセージとして社員に浸透しやすくなることがあります。
大野コーチのアプローチであれば、社員が変わる良いキッカケになるのではないかと直感しました。
インタビュアー:外部の刺激を入れることで、社員の皆さんの意識変革を促そうとされたのですね。導入前、組織に対して具体的にどのような課題感をお持ちだったのでしょうか。
森藤社長:実は、業績自体は順調に伸びており、特段マイナスとなるような問題が起きていたわけではありません。
ただ、私は「課題」というものは「目標と現実のギャップ」から生まれるものだと定義しています。
業績が好調であっても、さらに高い目標を掲げれば、そこには必ず新たな課題、すなわち「社員の成長とのギャップ」が生まれます。
現状維持の目標設定では、そうしたギャップは決して表面化しません。
あえて圧倒的に高い目標を設定し、意図的に成長の壁を浮き彫りにする。そして、そのギャップを埋めるための起爆剤として「すごい会議」が機能するのではないかと考えました。

インタビュアー:現在の組織体制についてお伺いします。トップダウンとボトムアップ、どちらの気質が強い組織だと感じていらっしゃいますか?
森藤社長:会社としての大きな方向性や決断についてはトップダウンですが、日常の既存事業の運営に関してはボトムアップの要素が強いと思います。
インタビュアー:日常の業務を幹部や社員の皆さんに任せている中で、社長がイメージするような行動や意思決定が現場でなされていないと感じることはあるのでしょうか?
森藤社長:それはありますね。
「私だったらこう判断するのに」と思うような場面は日常的に起きています。

インタビュアー:それは具体的に、どのような場面での判断や意思決定において生じるギャップなのでしょうか?
森藤社長:結論から言うと、仕事における「優先順位」の捉え方の違いです。
やるべきタスク自体は、皆しっかりとこなしてくれます。しかし、その優先順位を間違えてしまうと、最終的な仕上がりの質が全く変わってしまいます。
これは料理に例えると分かりやすいかもしれません。
同じ食材、同じ厨房器具が揃っていても、一流のシェフが作るか、そうでないかで出来上がる料理は全く異なりますよね。それは、調理の工程における最適な優先順位やタイミングを理解しているかどうかの差です。
仕事も全く同じで、優先順位を見極める「感度」こそが、成果の高さを決定づけるのだと考えています。

インタビュアー:なるほど。同じ業務をこなしていても、順番や注力するポイントの感度の差が結果に大きく響くということですね。
森藤社長:その通りです。しかも、その最適な優先順位というのは、時代背景や手元にある材料(リソース)によって常に変化していくものだと思っています。
ですので常に学び続け、状況に合わせてアップデートしていかなければ、最適な順序を導き出すことはできません。
しかし、人間は誰もが過去の成功体験を持っています。どうしてもその体験にしがみついてしまい、時代の変化に合わせて自身のやり方を変えきれない人が多いのが現実ですからね。
インタビュアー:実際に「すごい会議」を導入されて半年ほど経過しましたが、現時点で組織にどのような変化や兆しを感じていらっしゃいますか?
森藤社長:先ほど「人の成長とは価値観の優先順位だ」とお話ししましたが、その価値観の変容が起こりそうな雰囲気は感じています。
ただ、まだ明確な変容には至っていない…..というのが正直なところです。
インタビュアー:その要因はどこにあるとお考えですか?
森藤社長:組織の成長には「仕組みの構築」と「個人の成長」という両輪が噛み合うことが不可欠です。
ここ数年、当社では「経営幹部の成長」を大きなテーマに掲げていますが、そこに対するブレイクスルーがまだ大きくは起きていないからだと捉えています。

インタビュアー:初期セッションでは「ひどい真実」など、普段は隠れがちな本音を引き出すアプローチがあったかと思います。そこでの手応えはいかがでしたか?
森藤社長:当社はもともと意見やアウトプットを出していく社風なので、最初のセッション自体は非常に活発で良かったと思います。
ただ、問題は「その後」ですね。
セッションで意見を出すことは目的ではありません。出た本音や課題を基に、いかに行動を継続し「行動変容」を起こせるか。そこが当社の現状の弱さだと感じています。

インタビュアー:なるほど。セッションの場での気づきは得られても、日常業務に戻った後の実行力が続かないということですね。
それは、日々の業務が忙しすぎるといった環境的な理由もあるのでしょうか?
森藤社長:いえ、それは自分たち自身の問題であり、忙しさは理由になりません。仕事である以上、忙しいのは当たり前です。
会社が売上ゼロから100億円規模へと成長していく過程で、やるべきことが増えていくのは当然のことですよね。
重要なのは、その中で自身のキャパシティを広げ、実行できることを増やしていくこと。それこそが成長だと私は考えています。
他から見れば、当社の社員は非常によくやってくれていると思います。しかし、私たちがさらに高い目標を掲げている以上、そこを乗り越えていかなければならないのです。

インタビュアー:「すごい会議」を通じて、具体的にどのような数値目標を設定されたのでしょうか?
森藤社長:主力である住宅部門において、1年間で受注額を現在の約60億円から80億円へと引き上げる目標を掲げました。
昨年の10月からスタートし、今年の10月までの1年間での達成を目指しています。

インタビュアー:1年間で20億円のアップですか。1棟あたり3000万円と仮定すると、およそ60棟の増加になりますよね。
市場が縮小傾向にある中で、非常に挑戦的でシビアな数字だと感じますが、どうなんでしょう。
森藤社長:そうですね。当然、今の延長線上のやり方では到底届かない数字です。
先ほどお話しした「意図的に目標と現実のギャップを創り出す」という意味でも、組織に揺さぶりをかける、このくらい突き抜けた目標が必要でした。
ただ数字を掲げるだけでなく、それをどう達成するのか、組織の構造や働き方そのものを根本から見直す必要に迫られますからね。

インタビュアー:それだけの棟数をこなすとなると、当然ながら現在のスタッフの方々だけでは対応が難しいのではないでしょうか。人を増やしていく計画ですか?
森藤社長:おっしゃる通りです。大野コーチとのセッションでも、この目標に対して人員補強は絶対に避けて通れない課題だという結論に至りました。
もちろん人は常に増やし続けていますが、さらにギアを上げていく必要があります。
インタビュアー:昨今、建築業界全体で人材採用が厳しいと聞きますが、特にどの職種の不足を感じていらっしゃいますか?

森藤社長:やはり施工管理と設計ですね。これは当社に限らず、どこも技術者不足に直面している状況だと思います。
しかし、「人が採れないから目標を諦める」わけにはいきません。
限られた人材、特に専門性の高いプロフェッショナルの力をいかに最大限に発揮させる仕組みを作るかが問われます。
インタビュアー:そうしたリソース不足の課題もある中で、御社は独自の営業・設計スタイルを持たれていると伺いました。具体的にどのような役割分担なのでしょうか?
森藤社長:当社では、営業担当は一切図面を描きません。簡単なラフプランであっても、営業には書かせない方針をとっています。
初回のヒアリングの段階から設計士が同席し、専門家として直接お客様のご要望を伺う体制にしています。

インタビュアー:一般的なハウスメーカーですと、まずは営業の方がヒアリングをしてラフを描き、後から設計士が出てくるケースも多いかと思いますが、最初から設計士が入るのですね。
森藤社長:はい。現代の住宅は高い性能が求められ、緻密な構造計算が不可欠です。
構造を熟知していない営業がプランを描いてしまうと、無駄な部材が増えたり、経年変化で壁内結露を起こしたりするリスクがあります。
見栄えだけを整えるのではなく、何十年先も本当にいい家を提供するためには、設計士が最初からプランを描くべきです。
インタビュアー:図面を描かない営業担当の本来の役割とは何だと定義されていますか?
森藤社長:「お客様の代弁者」になることです。お客様の価値観を誰よりも深く理解し、設計士が最高の提案をしやすい状態を作る。
このように、業務を明確に切り分けることで生産性は圧倒的に高まり、当社のトップ営業になれば図面を描かずに年間30棟の受注が可能です。
月に1回図面を描く営業と、週に1回契約に集中する営業では、スキルの熟練度が全く違います。

例えるなら、月に1回ゴルフに行くのと、月に3回行くのとでは上達のスピードが違うのと同じです。
各々が自分の本来の役割に100%集中できる環境を作ること。これこそが、高い目標を現実にするための要だと考えています。
インタビュアー:
大野コーチとセッションを重ねてこられて、彼を一言で表すとどのような印象をお持ちですか?
森藤社長:う〜ん….一言ですか。一言で表すなら「深い人」ですかね。
言葉一つひとつや思考などが非常に勉強になりますし「こういう表現の仕方をされるのか」と感銘を受けることが多いです。
インタビュアー:確かに、大野コーチは非常に「言葉」を大切にされていますよね。
私自身も以前「どうすれば〇〇できるか」と書いた際に「『どのようにすれば』に書き換えてください」とご指導いただいたことがあります。
少しの言葉の違いで、思考の深さや捉え方が全く変わってくるのだと痛感しました。
森藤社長:まさにその通りで、言葉を大切にすることは非常に重要です。そして、最終的にそういった細部へのこだわりが、成果の大きな差となって表れるのだと思います。
その感覚を、当社の幹部たちにも深く理解してもらいたいと願っています。

インタビュアー:言葉へのこだわりといった細かな要素が、ビジネスにおける勝敗を分けるということでしょうか。
森藤社長:はい。現代のビジネスにおいて「これをやれば圧倒的に勝てる」という魔法のようなものはありません。
それは、オリンピックのようなトップレベルの戦いと同じで、常に「僅差の勝負」なんです。
最後の勝敗を決めるのは、結局のところ「エラーをしたか、しなかったか」、そして「細部にまでこだわり抜けたかどうか」です。

こだわっていない組織から負けていきます。それは我々住宅業界も全く同じです。
いくら会社が立派な仕組みを作ろうが、最終的にお客様と対峙する担当者が、同業他社と比べて「どのようにすれば」お客様との信頼関係を深められるか、そのわずかな差を突き詰められるかどうかが問われます。
その微差で勝ち続けることこそが、我々のような仕事においては極めて重要だと思っています。
インタビュアー:様々な事業を展開されていますが、主力である住宅建築は特に業務フローが長く、成果が見えにくい部分や時間がかかる部分もあるのではないでしょうか。
森藤社長:確かにそうですね。建築は仮説検証やPDCAサイクルを回すタームが非常に長いです。
何が良くて受注できたのか、何が悪くて失注したのかという振り返りがぼやけやすく、結果として人の成長にも時間がかかります。
しかし難しい分だけ、人が育てばそれがダイレクトに成果に直結します。
良い商品が出た、プロモーションが当たったというのは一過性の偶然かもしれませんが、人が育つことは会社の確実な力になりますからね。

インタビュアー:私が以前取材した、10年ほど「すごい会議」を導入されている企業様でも、最初は変化が見えにくかったものの、その後継続的に右肩上がりの成長を遂げているというお話がありました。
森藤社長:まさにそういうイメージだと思います。
簡単に上がった業績は、簡単に崩れます。「動画がバズる手法」のような短期的な成果を求めるノウハウであればすぐに結果は出るかもしれませんが、私たちが大野コーチから学んでいるのはそうした小手先のテクニックではありません。
社員が成長のマインドセットを持ち、本質的に変わっていく。そして継続することで、結果的にそれが社風として根付いていく。
そうやって、中長期的に組織全体の力がぐっと上がっていくのだと考えています。
インタビュアー:すぐに目に見える結果だけを求めるのではなく、組織の地力を上げるための投資ということですね。

森藤社長:ええ。経営の視点で言えば、「販促」なのか「広告」なのかの違いです。
販促であれば、かけた費用に対する短期的な効果を厳密に測定しなければなりません。しかし、広告というものは明日の成果ではなく、1年後、2年後を見据えた中長期的なものです 。
「すごい会議」は間違いなく後者であり、販促ではなく中長期的な人材への投資です。小さな意思決定や行動が積み重なり、トータルとして大きな成果が出始める。
我慢が必要な部分もありますが、長い目で見れば、会社としては「人が育っていく」そちらの道の方が圧倒的に強いはずです。
インタビュアー:すぐに目に見える結果だけを追い求めるのではなく、1年後、2年後の社員の方々の確実な変化と成長を信じて待つ。
その覚悟と忍耐こそが、強い組織をつくるための真の投資なのですね。1年後、そしてその先の御社のさらなる進化が今から非常に楽しみです。
本日は、大変貴重なお話をありがとうございました。

業績好調な現状に甘んじることなく、あえて極めて高い目標を掲げることで組織の「成長のギャップ」を浮き彫りにする。
正栄産業の事例から見えてきたのは、そのような森藤社長の厳しくも本質的な経営哲学でした。
過去の成功体験からの脱却、仕事の優先順位の変容、そして言葉の端々にまで表れる「微差」への徹底したこだわり。
短期的な業績向上やノウハウの獲得にとどまらず、中長期的な「人の成長」という最も確実な資産に投資し続ける同社の挑戦は、組織の次なるブレイクスルーを模索する多くの経営者にとって、大きなヒントとなるはずです。

私のコーチとして使命は、『苦悩に値する働く意味』の創出です。
地球は平らだと信じていたがために出帆しなかった船は、どれくらいあるだろう?
信じているものが見えるものを限定し、見えるものは打ち手を限定し、打ち手は当然のことながら、望でいる結果が手に入るかどうかを決定付けます。あなたは何を信じてビジネスしてる?